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飲むと気分よくなるよね、どうして?

一部の脳活動が抑えられるからです。
アルコールを飲むと、トロンとした目になって、ゆったりとリラックスし、また眠くなったりします。これはしっかりと目覚め、理性的な思考をする大脳皮質(脳の表層部)の働きを抑えるためです。=抑制
一方でいつもより大きな気分になって抑えていた感情を表に出したり、感情的になるのは感情や本能を支配している大脳辺縁系(中心部)の働きが活発になるためと言われています。=興奮
いずれもアルコールが神経に作用して生まれる強烈な変化です。

アルコールは神経抑制系であるGABA受容体(ガンマアミノ酪酸)に結合します。GABAは神経の緊張をしずめ、リラックスさせる神経伝達物質として最近食品の中にも含まれたりしています。
アルコールはグルタミン-NMDA受容体の興奮系を抑制します。
飲むとよく寝られる? 寝酒の影響(脳波/夜中のトイレなど)

「寝酒(ねざけ)」といってよく寝るために寝る前にアルコールを飲む方がいますが、これは確かに眠り始めには良いのですが、睡眠後半の正常な眠りを妨げて(さまたげて;じゃまをする)います。睡眠の後半に多くあらわれるレム睡眠が十分でない状態が続くと、さらに健康を損ねる(そこねる;そこなう)結果になります。


アメリカでは20%の人が眠るためにアルコールを飲むといわれており、日本での2000年の結果では、成人のうち男性の48.3%が女子の18.3%が週に1回以上、眠るためにアルコールを飲むという調査結果があります(Kaneita, 2007)。残念ながら、意図した(いとした;こうしようと考えていたこと)ことと正反対の結果になってしまっています。
飲酒によって、深い眠りを表すデルタ波というものがより早く(長く)現れますが、睡眠前半にあらわれるはずのレム睡眠が極端に減少したり、全般的にレム睡眠が阻害(そがい;じゃますること、さまたげること)されます。睡眠後半には浅い睡眠段階のステージ1や覚醒が増えたり、通常眠っている時には出ないはずのアルファ波というものも現れる場合もあるようです。つまり睡眠による回復機能(かいふくきのう;悪くなったものがもとの状態にもどるはたらき)が十分に発揮(はっき;十分に表に出して役に立たせること)されないようです。



アルコールは筋肉をゆるめ、全身をリラックスさせますが、喉(のど)の筋肉も例外ではなくのどの筋肉も同じようにゆるんでしまいます。いびきや睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん;睡眠中に一定期間呼吸が止まってしまう症状)を引き起こす可能性があります。


飲むとどうしてもトイレに行きたくなってしまいます。トイレに起きることで通常ならば寝ているところで起きてしまい、その後の睡眠に影響します。


寝酒の習慣は、知らぬ間にアルコール依存になる可能性があります。
どのくらいなら飲んでも大丈夫?
1日のアルコール適量/ビール・日本酒・酎ハイの適量

厚生労働省が適量とする1日あたりアルコール摂取量は成人男性で20グラム以内です。
女性の方がアルコール分解が遅く、また概して体重が軽いので、男性量の3分の2くらいを目安にすると14グラム程度です。(男性の半分を目安にする場合もあるようです。)
これはアルコール度5%の缶ビール(500ml)1本、女性は350mlの缶ビール1本相当です。
平均15%の日本酒にすると、男性170ml女性、120ml。お銚子一本にも満たない量です。
流行りのストロング系酎ハイ9%ですと、男性280ml、女性200mlです。
1日当たりの飲酒はこれくらい
(適量の目安)


アルコール度5%ビール

アルコール度15%日本酒

アルコール度9% 酎ハイ

思った以上に少ないと感じた方も多いのでは?ちょっと一杯、をこの量にとどめるのはお好きな方にとっては難しいかもしれません。
付き合いだってあるし、たまには飲みたいんだけど…? アルコールを摂取したときの工夫

たしかにお付き合いで飲みに行ったり、コミュニケーションを深めたりするのに、お酒の席は欠かせませんよね。せっかく飲みに行くのに、あまり制約 (せいやく;決まりややくそくごとを作って自由にはさせないこと)があってもおいしく飲めませんし。
ただ多少の気づかいで体の負担を軽くしてあげる事はできるかと思いますので、ポイントを紹介したいと思います。
- 良い睡眠を取るには、飲む量をセーブできるのが一番ですが、そうもいかない時は、飲んだ日は寝るまでの時間を長く取ることが重要です。


- 飲んだ量や個人のアルコール分解能などにもよりますが、寝る4時間前までにお酒を切り上げられたらよいですね。しかし実際はそこまでの十分な時間が取れない場合がほとんどでしょうから、飲酒中、また飲酒後はなるべく水をたくさん取るようにしましょう。(分解促進につながりますが、夜中のトイレは避けられないかも…)。


- 週に2日〜3日の「休肝日(きゅうかんび;アルコールの分解に負担がかかる肝臓を休める日)」を設ける(もうける;作る)などの工夫も大事です。
- その際昨日は休肝日だったから、または明日は休肝日だし、今日は多めに飲んでもいいや…という考えは禁物(きんもつ;さけるべきことやもの)です。
- ノンアルコールビールなどをうまく使って、アルコールを飲む量をコントロールしましょう。




オイラのブツクサ劇場
ちなみに、ワイン1本を寝るまでの4時間で分解するには…
エエト…750ml ×0.12(アルコール度数)×0.8(アルコールの比重)=72g
72gのアルコール を4時間で分解する
とすると1時間あたり
72÷4=18g
つまり18g分解しなきゃいけないってこと…
1時間あたり18gアルコール分解する体重の目安っていくらだったっけ?

*実際には体重が180キロであれば、この量のアルコールを1時間で分解できるわけではありません。
最近、酒量が増えてる…
よくないなぁとは思ってもなかなか… 要注意の飲み方

楽しいお酒は時には良いものですが、
↓このような状況は要注意です。
- 毎日どうしても飲まずにはいられない…
- 酒量がどんどん増えていく…
- 飲んだことや場所すら覚えてないことがたびたびある…

こうなると睡眠の質が悪くなる程度の話では済まなくなります。アルコール依存症が疑われる場合もあるかもしれません。さらにひどくなると仕事が手につかなくなり、生活も崩壊してしまう・・・なんてことも…。
ほんの小さな楽しみだったものに、いつの間にかハマってしまうことは誰にでも起こります。いつでもやめられると思っていたのに…気がついたら…。
The relationship between sleep duration and mood in adolescents: A systematic review and meta-analysis
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