目次
入浴自体は睡眠に効果的だといわれていますが、熱すぎるお湯は眠る時にはなるべく下げたい体温を上げてしまいます。また活動のモードである交感神経を活発にさせてしまいます。

お風呂には熱好きの方、ぬる好きの方いらっしゃいますが、寝るという観点からいうとぬるめの温度がおすすめです。
熱好きの方が熱いお湯が好きな理由、入ると「すきっとして、目が覚める」がその理由です。すっきりと目が覚める=体温が上がる、血圧が上がる、交感神経が活発になることを意味しています。
「交感神経」と「副交感神経」という言葉を聞いたことがある方は多いはず。この神経は綱引きのような役割を果たしつつ、状況に合わせて体の状態をコントロールしています。活動する時には交感神経、寝る時には休息に入るためにリラックスの神経である副交感神経を優勢にさせたいものです。

概日リズムの「体温」のところでも触れましたが、1日の中で夕方に上がった体温は夜にかけて下がっていきます。深夜寝ている間には、さらにからだの奥深いの部分、「深部体温」は下がっていきます。これはゆっくりと休むため、低モードになっていると考えられます。


適温(38~40度程度)で入浴した時、からだの奥深いの部分「深部体温」を高めるため、それがかえって睡眠に向かって体温を下げる働きにつながり、寝つきの良さを強めたり、深い睡眠(徐波睡眠)を持続させるのではないかといわれています。

また、たった数度の温度の違いでも、徐波睡眠の量に違いが出るという研究結果もあります。近年のメタ・アナリシス(複数の研究の結果をまとめた研究)では、40-42.5度のお風呂、寝る1〜2時間前、10分程度入浴するのが、特に寝つきを早めるという結果を公表しています(Haghayegh, 2019)。

運動に関しても、あまり激しい運動を寝る直前にしてしまうと、心拍、血圧や体温が上がってしまい、交感神経優勢(ゆうせい;いきおいがまさっていること)の活動モードに入ってしまい、睡眠にむけて心拍や体温を下げようとする概日リズムを乱すことにもつながります。

でも仕事が終わった夜でないと運動できないじゃん?
クールダウンタイム

運動自体は睡眠の質を改善するという研究結果が多数あり、推奨(すいしょう;すすめること)されています。しかし確かに、昼間はお仕事で運動する時間がない…ということがありますよね。
睡眠までの時間を取れれば問題はなく、汗ばむような運動も入浴と同様に体温を一旦上げると、下げるはたらきにつながるのでむしろ良いともいわれています。
ポイントとしては運動してから寝るまでの間、
1)身体をクールダウンさせる時間をとる(目安は2時間程度)
2)並行して他の睡眠に影響するようなこと(アルコールやカフェイン、食事、熱いお風呂、電子スクリーン視聴など)を控えることも大切です。

寝る直前に身体を動かしたい場合は「ヨガ」やストレッチなど深くゆっくりと呼吸するものが副交感神経の働きを高め、睡眠の質を高めることが示されています。

寝る前に食べるにはよくないっていうけど…

寝る1時間ほど前の食事が耐糖能異常*と関連しているという報告があります。直接的に睡眠の質を下げるというよりも、概日リズムを変化させ、代謝を落とすのではないか、という見方がなされています。また寝る直前の食事がインスリン抵抗性や肥満と関連しているという研究が多く示されています。
耐糖能異常(たいとうのういじょう):血液中の血糖値が正常な範囲に収まらなくなってしまう状態。

もともと寝ている間にも、消化活動が行われますが、寝る前に食物を摂取すればさらに胃腸を活発に働かせることになり、負担がかかります。
からだに負担がかからない程度まで消化を進められるように食事の時間をコントロールすることはとても大切ですね。
